となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > 『日記』 > 意外に知られていない、鼻緒。 しかも、その一部だけの話。

2010年03月10日

意外に知られていない、鼻緒。 しかも、その一部だけの話。

鼻緒について、意外に知られていないので。。
(自分の知識も深くするための出力でもあります)

鼻緒(仙福屋では、『花緒』なので、ここからは『花緒』で)
はちょっと可哀想な存在です。

草履を履かれれる際、履きやすさを左右するのは、
『台!』と思われているので、
注目が『台』に行く事がとても多いです。

確かに、固くて足に合っていない台は履きにくいですが、
大きく分けて、草履を構成する『花緒』も履き心地に、
とてもとても影響を与えていまし、
あまり知られていない細かい分類もあります。

履き心地の面での、うちの花緒の拘りは・・・
甲に当たる部分がビロード状になっていて、
とか、見えない芯部分を解してある等、
ありますが、それはまた今後で・・・

それで今日はその細かい分類を少し書きたいと思います。
『仕立て方』には『台』と同じく幾つかの種類が有ります。
(ツボ部分もありますが、これはまたいずれ。。)

大きく分けて、3種類。
1、『のぞき』
2、『額』
3、『高腹』

この中でうちの『仙福屋の草履』の花緒で多いのは、
1番目の『のぞき』です。

では、この『のぞき』何が特徴だというと、
写真を見て下さい。

IMG_0614.jpg

上から見たとき、内側にある『裏のビロード』が見えるように、
仕立ててあります。
真っ直ぐに裁断して、芯の部分をわざわざずらして仕立てます。

帯地の色目に、ビロードの色をコーディネートしていますので、
これが『のぞく』ことで、白足袋等と合わせて、
ちょっとした拘りが出てきます(ツボも同じ)。
(帯の色と合わせると、色気が出ます。)

また、ずらす事で、
花緒に使った帯地部分を摩擦から護ることで、
花緒が長持ちするという、ちょっとした利点もあります。

以前、
草履職人さんと打ち合わせをした際に、上のような話を聞いて、
この仕立て方を『仙福屋の草履』に取り入れました。

職人さんは下のようなことを言っておられました。
『ホントは、そこまで色を考えなくてイイもんより
手間やから、こっち(のぞき)でやるのは、損な性格やな~。』
と。

その代わり、この『のぞき』仕立てもあって、『真綿台』とともに、
『仙福屋の草履』評判は最高に良いものを頂いています。


もう一つ『仙福屋』で採用しているものは、
雨・雪草履』用として、『額』仕立ての花緒です。

水分を含んだ状態で、履くことを想定していますので、
その状態で擦れるのを防ぐために、両方の端を帯地から
離しています。

ですので、上から見るとこのように見えます。
IMG_0615.jpg
『額仕立て』

花緒が細く見えることも利点ですが、
帯屋としては、当初は『折角の帯地をもう少し見せたいな』
というがありましたが、今では雨・雪草履ともに、
とても人気です。。


今のところ、採用はしていない3、『高腹』は、
表部分と裏部分をピッタリと合わせたものです。
(上から見ると、ビロード部分が見えない)

雨草履のように、何かキッカケがあれば製作する可能性は
あるかもしれませんが、今のところ
『耐久性と裏のビロードをわざと見せたい』、という思いで
まだ製作はしていません(写真も無くてすみません。)。

『高腹』の由来は?と聞くと、『昔からこの名前やしなぁ』
と、何とも職人さんらしい答えが返ってきました。。。
(また調べておくそうですので・・・)


花緒の中、一つの部分をとっても、昔からの拘りがあり、
様々な理由があります。
うちもそれを聞き考えながら、モノづくりしています。

帯も同じですが、
モノづくりは様々な話を色んな人から聞いているだけでも、
作り始めた頃から今まで、
毎日『なるほど~』と『へぇ~』の連続です。


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