2015年09月14日
なんとも言えない色作り
唐長文様で帯や着物を作る場合、紋意匠(柄作り)にも、もちろん力を入れますが、さらに一段気を入れて作るのは『色』。今まで相当チャレンジしながら、色々やりました。特に今、進めているモノは先染めの反物の上に、さらに色を加えてなんとも言えない色を作ること。単に下地を染めて上に色を掛けるのでなくて、それだけでも着物として成立する織りの反物(先染め)の上に、敢えて色を掛ける、そんなことをしています。
最初の方は、『下の色が上から掛ける色と上手く馴染む様に』ということを狙っていました。たとえば黒と白を掛けてグレー。そんなイメージです。そこからスタートして今進めているモノづくりは、『上から掛ける色が完全に下の色を覆い隠すように』。そんなことを意識しています。
なぜ、そんなことをするのか?というと、上の色で下の色を完全に消した様でいても、今使っている先染め生地の場合、先染めという性質上や生地の打ち込み具合のため、人の動きや生地の角度によっては、(完全に消したと思っていた)色が下から浮いてきます。コツは色を出す際や染める際に、下の色を完全に忘れてしまうとダメですが(だから真っ黒はダメです。)、僅かに下の色を気にしながら進めていきます。この『気にしながら』のあんばいが重要で、それが色々やった現在やっと掴めてきました。そんな段階です。
今は手元にありませんが、下の色が『ベージュ×若草色』。その上に少しヒネたグレーを掛ける。そうすることで、柔らかく元気なグレーの反物です。一番気に入っている配色です。
上がりたてのモノは『ベージュ×真っ白』の上に濃いモスグリーン。
『ベージュ×白』×『濃いモスグリーン』
にすると、濃いグリーンの着物の中、遠くに霞んだ文様を感じられ、奥行きもいつも違う奥行きを感じることができます。食い合せを一つ一つ探す、そんな試行錯誤ですが、この感覚を薄地から濃い地まできっちりと掴み、今までに無い、なんとも言えない色味をまず唐長文様で表現できれば、考えています。シンプルな分、映えてくれそうです。
たまに今でも、下の生地を完全に殺してしまったり、同化させてしまい過ぎることもあるので、モノづくりするリスクとしては低くはありませんが、実際に見て触って頂けると、『お〜。』と思って頂ける色に仕上がっています。少しずつお披露目したいと思うので、楽しみにしていて下さい。