2015年10月08日
畦織の帯。
『畦織』
教科書みたいになりますが、西陣で三大織組織というと、①平織②綾織③繻子織(しゅすおり)があります(これを覚えておくだけでも、おっとなりますよ。)。素材の違いではなくて、織物の経糸・緯糸がどう交差させるか、ということです。この関係性で風合いや得意とする表現方法が変わってきます。
今、となみが織っている大部分の織物はこの三大組織そのままではなく、改良を加えたもの、組織を複合させたモノなど、複雑化した織物を織っていますので、『この帯の織物は三大組織の中で何?』と聞かれる、と実は返答に困ります(笑)。例えば、この織物は平織りを2つ引っ付けた様なモノとか・・・。とういう風に歯切れが悪くなるとおもいます・・・。
今回のものは、その中でも3大組織の原型に近い①平織を僅かに改良を加えた『畦織』です。通常想定されている畦織よりも、緻密な表現ができる様に改良を加えたため、織れる意匠の幅が大幅に広がっています。柄や配色によっても、大きく異なりますが、どちらかというと素朴な表現が大の得意としています。
その織組織を使って、今回製織したのは、横段の帯。
先日も登場したものですが、どちらかというと、こういう配色の傾向に重きを置いたモノづくりを検討しています。糸の綴じを粗くし、ベースとなる地部分との落差を付けることができる織物なので、ボリュームのある意匠等には最適です。柄も素朴な横段ですし、さらに活きてきます。
普段の自分のモノづくりとしては、この畦から遙かに進化した紹巴織を中心に行っていますので、比較すると細部の表現は緩やかな検討で済みますが、その変わりに綴じの高低差、3Dの様なイメージをしながらものを作ることが必要です。同じ帯づくりでも、脳の使う部分が違いますので、長時間、何日もやっていると、鍛えられるのか頭が良くなった気がします(笑)。
そのため、同じ織組織に留まって、じっと同じ様なモノを作っているよりも、他の織組織に目を向けて、色々と行った方が良いことも多いです。となみ織物は、この部分(帯の織組織)を一番多く織れる会社だと思います。そのため、多くの織組織にふれることで、違う角度から様々な発想のモノづくりができ、多様な商品群につながっているのかもしれません。
結ぶ方が惚れる柄付に配色、結び易さ、結んでいて楽だと感じる重量面、それらを実現させる技術がメーカーとして大事です。日々のモノづくりは、本当に微々たるモノしか進んで行きませんが、その集大成で出来たモノが帯や着物、小物ですので、完成品としての商品を紹介するのと同時に、それまでの工程や過程、思いも伝わるように今後も工夫していきたいです。
この写真の帯は色の出方も紹巴とは異なるので(こちらの方が生々しい色になります)、加減をもう少し試験して覚えていく必要がありそうです。そこに慣れ過ぎると、また紹巴織に戻った時、また・・・。となりますが、それも勉強ですね〜。