2015年10月14日
勝手の違うモノづくり。続き
防寒用のコートを作ろうと製作中なのが、南蛮七宝文様のビロード。今は大まかな規格づくりが終了し、具体的な中身に入っています。たとえばビロードといえば、製織段階で輪になるように織り上げ、製織後『輪の部分』をカットして、柄が立つように作ります。ここが最大の特長なので、柄の流れを意識して進めていきますが、それ以外にも・・・。
帯は図案、紋図(意匠図)を職人さんと作り上げて、モノづくりしていきます。モノによっては図案に自分が関わる重点を増やしたり、その反対であったり。スタッフの関わり方で同じ図案・職人が関わっても、そうならないのが、帯づくりの面白いところです。
そんな帯づくりと同じ様に構えていると、今回に関しては検討する箇所が帯よりも少ないものの、話の展開が早く、こちら予想よりも早く、次、はい次と、課題が飛んで来るので、手探りする間もなく進んでいます。今は、紋図段階。元の図は『南蛮七宝文様』ですので、後は一ドット単位で文様の①サイズ検討と②一見では気づかないかもしれない極細部の手直しをしています。サイズはその通り、柄の大きさ。版木のサイズを原寸に、織り上がった時もそう見える様にします。今までの経験上、織物にすると少し小さく見えることが多いです。
ちなみに、こんな意匠図(コピー)です。
もう一つは、織物の特徴でもあるデジタル的な問題。織物は経と緯糸との交差点で柄を作ります。そのため、イメージとしてはドットの世界、デジタル的なものです。いくら丸柄に見えても、近くまで寄って、もしくはルーペで見ると、階段状のギザギザになっています。反対に図案や版木を使って作る唐紙は、どれだけ近づいても丸の線はなだらかな曲線。
この差を意識して埋める仕事をしていきます。言ってみれば人間の目でみて自然に見える、細部の調整です。真円よりも、かすかにゆがんだ丸の方が『きれい』。そんな感覚の調整をしていきます。
2度目に書きますが、それを帯でするのは経験で掴んでいますので、気がつけばやっている。そんな感覚ですが、今度はビロード。しかも初めて組ませてもらう職人さん。ちょっとやそっとでは上手く行かないと思いますので、長期戦の覚悟をしながら、それでも一回で決める。そんなつもりで、やっていきたいと思います。
全て上手く行けば、一本目は来月初め。この頃にまた報告ができるように頑張ります〜。
通常、冬に向けての『防寒用』だと(仕立も含めて)、先月くらいには完成していないとダメですが、規格や設計に時間を十二分使いましたので、早くても一本目が冬の入り口に上がってきます。『作って直ぐに販売。そんなモノづくりがいま時代多いのに、ほとんど来年の冬用になるかもしれないモノづくりって、珍しいな。皮肉抜きで、ほんとに。』と言われました。たまたまのタイミングもあって、納得できるように進めていたら、冬になってしまった。急がずちゃんと納得を重ねて作っているモノですので、予想よりも進度は早いですが(笑)、いいモノを仕上げて行きたいです。