2016年10月26日
伊調馨さんに国民栄誉賞受賞式典で結んで頂いた帯。
タイトルの話が少し落ち着きましたので、
この帯について説明をしたいと思います。
しばらく、こういう話題性のある話題が少なかったためか、
一気に『どこの帯?知ってる?』話が、バーっと広がり、結構な数の問い合わせも。
(Facebookでも相当な多くの方がアクセスしてくださいました)
副賞となった本袋と勘違いされたり(確かに、うちでも本袋は織っていますが)もして、
話が噛み合わなかったり、
そんな急に、数を織れるものでは無いのに、『なんで無いんだ。』的な話を頂いたり、と。
数日は結構凄いもんでした。
本当に、ありがとうございます。
基本的に、となみ織物では帯には個々、名前を付けることが少ないので、
早速この帯には『伊調さんの帯』と社内では呼ばれています(笑)。
ちなみに、通常スタッフ間では『織組織名』と『大まかな意匠の名前』、それでも思いつかない場合には、
加えて『地色』を言えば、ある程度絞れます(この辺りが新入社員との分岐点かも)。
今回であれば、『二重織で、雪輪と桜・竹。地色は淡いピンクの帯。』と言えば、
ほとんどのスタッフは絞ることができます。
さてさて、この帯の織組織である『二重織』。
今は織れる機自体もホントに少なくなりました。
すごい数の経糸(三重経・約8000本)を上下させて、
それらの色をベースに柄を織り成し、緯糸(横糸)で味付けをする、
基本的には、そんな織物です。
敢えて言うと似ている織物は、経錦。
大胆な柄やハッキリとした柄が得意な織物で、経糸を思いの通り染めることが
できていれば、絶妙な色を作りだすこともできます(←今回はコチラのパターン)
もちろん、良いことばかりではなくて、非常に本数の大きな経を使う織物ですので、
製織時、経の上下だけでも、家自体が振動することも・・・(機にも負担が掛かり長く織れない)。
意匠には奇をてらうことなく、ストレートな日本の文様である『桜・竹・雪輪・・・』。
過去、何万何十万柄に使用されてきたはずですが、長い年月、生き残ってきただけあって、
飽きのこない、柔らかさの中にも、力強い意匠になっています。
今回この帯に関しては、この様な説明をする間も無く(苦笑)、バタバタでしたので、
ここでこうやって書くことができ、機屋として嬉しいです。
こういう瞬間風速がビュンというようなことは、
そうそうありませんので、次はあまり期待せず(笑)、またコツコツ積み上げていきたいです。
それにしてもよくお似合いでしたね。