となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > モノづくり業

2015年06月13日

本袋のモノづくり進行中

コツコツと積み上げながら製作中の本袋。

よく携わる紹巴織、総紗縫、しぼ織とは根本的に異なる織物です。
裏を同時に織る意味では、(今はなき)『秘錦(ひごん)※』に似ています。
 ※ご存知の方もおられると思いますが、タレがまでが本袋で後は一枚ものの帯。

 

秘錦のモノづくりの場合、両手両足を縛られた気持ちでのモノづくりです。
これは?⇒織れない。あれは?⇒できない。じゃこっちは⇒キズが・・・。

 

ただ、それが大変だったしもうイヤかと振り返ってみると、実はそうでもなく(笑)、
帯の製作自体が元々制限があり、その中の試行錯誤が結果『美しいモノ』を作るための
要素だったりしますので、この制限付きモノづくりも悪くありません。

 

今回の本袋は、それよりも自由度があります。

 

そのため、まず最初の柄は敢えて制限度がMAXだった
秘錦の柄リメイクから敢えて入っています。

 

それ自体はほぼ紋はできたので、紋堀りが終わり試織となれば、
紹介していきたいますね。

 

他のスタッフは秘錦つくりの際には、ほぼタッチしていませんでしたので、
紹巴織や総紗縫からの本袋アプローチになります。

自分の場合は、その通常アプローチの他に、秘錦からのアプローチも役に立つはず?
ですので、その辺りも含めてちょっと変わったモノづくりも出来ると思います。

 

秘錦リメイクの帯が上がれば、
次は『海路/雪佳本袋』を主としてモノづくりやっていきますね。

2015年06月09日

今日はその工房の一つへ行ってきます。

 

先週末にふわふわバッグが上がってきました。

DSC05452.jpg
『しぼ織/若冲の世界/ふわふわバッグ

 

よく勘違いされてしまいますが、仙福屋で製作するロット数は、
他から見ると『超』が付く小ロットの製作。8つです。

こういう風に書くと『8個って、一つの帯の柄につき?』と聞き返されますが、
すべての柄のほわほわバッグ、今回の製作数です。

 

それでも一度発注を掛けると、こちらの意図する柄の出し方での裁断、縫製。
全部を日本国内の職人に一つずつ仕上げ行ってもらうので、来週すぐに上がってくる。
ということはなく、1〜2ヶ月もしくはそれ以上掛かってしまうものばかりです。


自分たちのモノづくりも同じで、『つくったもの』『できたもの』がどういう反応を頂いて、
どのように使われるのか?毎日聞きたいですが、そういうわけには行かず(FBには感謝)、
出張スタッフからも含め、できる限り時間を作って、情報収集をやりたいと思っています。

 

おそらく今日行く工房も同じ。情報はとても大事です。

今まで作ってきて定番と言われるものは、これからも作り続けていくために、
お客さんの喜ばれている意見、どういう風に使われているか、あれば改善点の話。

を出来るだけ生々しく詳細に伝えて、これからも新しい気持ちを持って、
作り続けてもらえるように。

 

今から作る新しいものには、自分たちが想定する使い方を伝え、
帯の見せ方をそこに加えて検討、試作、本番と行っていきます。

 

やることは違っても日々行っている帯づくりも、全く同じです。
 

また成果は上がり次第、紹介していきますね。

2015年06月07日

大きなモノづくりになるように。

 

明日からしばらくは、(経錦はしばらく横に置いて)これです。

 

IMG_5436 (1).jpg
『本袋』

 

元々からすると特殊ではない織物ともいえますが、いま西陣ではなかなか見ることが
できなくなってしまった織物の一つです。その意味で経錦も同じですね。。

 

過去となみ織物では織っていて、主流とも言えるほど機もありましたが、
形を変えながら、結局は一旦全て無くなった織物でもあります。

形を変えて復刻⇒もう一度、となみ織物を代表する織物にするために、頑張ります。
(主流だったのは何十年も昔ですが、まだノウハウは残っているのが有り難い。)

 

現状は数柄で社外はもちろん、社内にも色んな意味で認知度が低いため、
次回の雑誌でも大きく紹介しようと思います。


まだ打ち合わせ段階なので、大きなことも言えず、タマゴみたいなものですが、
いつもとは全く形を変えますので、記憶に残るかなぁ、と。

 

その交渉も明日から。

 

楽しみです!

2015年06月03日

定番の御召作り。

 

一箇所に留まってしまいそうで『定番』という言葉はあまり好きではありません。
が、『仙福屋の御召』に関しては、敢えてそうなっていいと思っています。

 

世の中に着物地が減ったといっても、まだまだ選択するモノは沢山あり、
その中から最適な一枚を選ぶのは、楽しいですがなかなか困難です。

そんな時に初めて手に取る着物として、もしくは手持ちのほとんどの帯に合わせ
ることのできる着物として、定番は必要だと思います。

 

先日紹介した『Kilim菱』(一番左)。
今日は他の2色が上がってきました。

 

Kilim菱.jpg

 

今まで製作した御召の柄は30ほどありますが、こうやって全ての柄に
別配色を作ります。ものによっては8色、少なくても4色。

 

いつもは新しいモノ、面白いモノをイメージしながらのモノづくりですが、
この時ばかりは、無数の色糸から柄とケンカしなさそうな色を選び、見本で織って、
ひたすらピンと来る色を探す、そんな静かなモノづくりです。

 

となみ織物の着物といえば・・・。
段々と定着してきましたので、ここはこれからも堅実にやっていきますね。

 

 

2015年06月02日

過去の難問 その3

 

『過去の難問 その3』

その前の『その1〜その2』とも、何年も前に図案⇒意匠図作成、目出し(試験織り)を織る所までは
手がけていたものの、最終製品の『帯』まで到達していない、『総紗縫/雪佳』です。

その1⇒http://www.kyo-tonami.com/godaime/2015/05/post-2142.html
その2⇒http://www.kyo-tonami.com/godaime/2015/05/post-2144.html

 

それらを今回の機会、再度取り組み直して、おこなっています。

 

この『その3』が最後の難問(であったほしい)。

 

DSC05311.jpg

『総紗縫/神坂雪佳の世界』

 

見るだけで総紗縫らしくない顔をしています。
(白鷺でなくて帯地の顔ですよ~。)

 

『織物の織り方=織組織』は図案に応じた、織組織を選択してそれを有効に活用して、
意匠を作り、帯を作るのが基本です。

 

総紗縫は今でこそ表現力がマシましたが、元々こういう織物は得意としない織物でしたので、
この意匠を作った時は、ほぼ工夫をせず正面から作ったモノでしたので、目出しは織れても、
これ以上は難しい。

 

織るのも難しいし、裏を見ると、糸がパンパンに通り過ぎていて、丸巻きから袋帯への仕立ても難しい、
そんな状態で止まっていました。

 

個人的には、メインの意匠では無いものの水草の発色が抜群に良く、これはお腹の柄単体でも
面白そう。そんな記憶がのこっていました(今回はそれを採用します。)。

 

正面からは行くと、技法が増えたと言っても、同じ様な問題に直面しそうなので、
今回に関しては、糸の処理が困るとき、最近良くする手法でそれを回避し、さらにもう少し、
柄に動きを付けて、完成させる予定をしています。

 

これが終われば、本袋。
そして、経錦。

帯のモノづくり、盛り沢山です。

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2015年06月01日

総紗縫のまとめみたいになりました。。

 

よく言われます。
帯ってこの柄、一本しか織らないのですか?

 

図案を描き、設計図(紋図)を作り、試織してとなると、一本のみでは採算が取れません。
時代を先走り過ぎてか、遅すぎたのか、そんな時代は来ないのか、わかりませんが、
頑張っても(苦笑)一本しか売れないモノもあります。

 

もちろんコスト面だけではなくて、一本目ではキズが多く織りなれる二本目に
安定する、という技術的なことも意匠によってはあります。

 

ずっと同じ柄同じ配色でそのまま織って、売り続けることもできますが、
となみ織物ではしたくない、新しいモノづくりして、多種の柄を世の中に発信したいと考えています。

 

そういった意味でも、総紗縫は非常に人気の織物で、売れ筋を追っかけていれば、
大変有り難いですが、同じ配色の同柄ばかりにならないように、新しいものを1柄作っては、
今までのモノを1柄廃盤としています。

 

遥か昔は、同じ帯が何百本も出た時代もあったそうなので、そんなの気にせず売れるものを
作って売ったらイイ、そう言われるメーカーもありますが、うちでは基本的にやりません。
(例外が出そうなのは、裏無地。同じ柄で被ってくることも、
 それでも意識的に避けるようにしています。)

 

そんな嬉しいような困ったような織物の代表、総紗縫。
当初のモノづくりは箔のみで織るシンプルなものでした。

そこから上記の様な新しいものを。という声に押され、モノづくりして、
大幅に可能性を広げてきました。

 

大きく流れを書くとこんな感じです。

 ☆初期紗⇒緯を入れる⇒切り替え横段⇒プラチナ箔、純金箔使用⇒蛍光糸⇒併用シリーズ『彩』

 ☆後加工としては、『汕頭刺繍』、『相良刺繍』、『竹屋町刺繍』、『スワロ』等々

 

となります。

改めて書くと、『ほーっ。よーやってきなぁ。』と感慨深いです。

 

最近はこの『黒』も定着してきて、今は『黒+』も一緒にモノづくりを行っています。

 

IMG_0094.jpg

『黒+』

 

はじめのはじめは、ほとんどが軽い思いつきです。

そこから作っても、ほぼ100%失敗してしまいますが、ほとんどが失敗してからの2回目で、
方向性や成功の確率が決まるので、この目出しもこれをどう持っていくか?探りたいです。

 

あまり体調が良くないので、治してからがんばります。
多分、最近の京都の気温ですね。

 

 

 

2015年05月31日

間に合った?

 

この衣替えギリギリのタイミングで、Celtic帯揚げが上がってきました。

 

シンプルが故にキズが出やすい帯揚げ、絽夏バージョンです。

 

帯や着物であれば、流通と仕立て期間も考えて、もう数ヶ月早く上げておかない
とダメですが、仙福屋の小物に関してはギリギリまで粘れます。
(冬に夏物を考えたり配色をしなくて良い。)

 

SDIM0208.jpg

 

やはりモノづくりをしていくためには、季節感大事です。

 

週初めくらいからは雑誌の打ち合わせ。次は早くも秋をイメージです。

このCeltic帯揚げとは違い、今の京都の気候が梅雨になり、湿度があがり、蒸し暑い時期。
それを超えるとだんだん気温も上がり、祇園祭。そこからガンと真夏の気温になって、お盆。

やっと涼しくなったかな?
と思った頃に発表するモノです(遠い!)。

 

今のところ、僅かな案しかありませんので、季節の移り変わりを想像しつつ、
想像だけで夏バテしないように、アイデアを膨らませていきます〜。

 

2015年05月28日

(襦袢ですが)モノづくり過程を並べる

 

去年から特にお気に入りの夏単衣(動く人は通年を通じてOK)襦袢地です。

 

SDIM0193.jpg
『南蛮七宝文様/夏単衣+α襦袢』

 

会社の向かい『となみ丸』にこうやって陳列をしています。
この生地、ただの色違いの様に見えますが、実はちょっとずつ性質が違います。

 

そんなに大したことではないですが、この襦袢ができるまでの、
モノづくりの変遷ショートバージョンです。

 

まず、一番向こうの『白✕白』。この生地で一番最初に作った南蛮七宝襦袢地です。
色も生地も、誰にも文句をいわれることのない、夏にぴったりお襦袢です。

次に、一番手前『白✕碧』。
この生地を染める際、襦袢屋さんに夏物は(透けるので)こんな濃かったダメですよ(売れませんよ)。
と反対&止められた色味です(笑)。今までのモノからすると大変気持ちはわかりますが・・・。
そんなことなかったです。

 

写真のモノは試作で、去年実際に完成したものは『こんなのが欲しかった。』と言われ、
驚くほどの評判をいただけました。(完売です)。
もちろん反抗心みたいに世間に無いものを。と思って作っているワケではなく、
『着てみたい!』と感じてもらえる様に、できるだけ先回りして作ろうとした結果だと思います。

 

そして、真ん中は今年の色。
白とアイボリーに少し茶を入れた色味のモノです。

 

こちらは洗えるようにしています。
自分の洗濯機で実験を繰り返し行いました。

『ここまで洗ったらアカンやろ』と心のなかでは思っていましたが、
全く問題ない生地感です。
実験の様子はこちら⇒http://www.kyo-tonami.com/godaime/2015/03/post-2071.html

 

できた完成品をポンと陳列するのはとても簡単ですが、この場所ではモノづくりの試行錯誤を
過程と共に感じていただいて、楽しんで頂ければいいかな?と思っています。

スタッフも自分の身になった体験談を話せるようにと、一生懸命モノづくりを頑張っています。

2015年05月27日

過去の難問 その2

 

今日も

前回に引き続き
雪佳の世界を総紗縫で織ろうとした目出しです。

 

カキツバタと同じ難問があります。
それは帯一本にずっと流れる『流水』部分です。

 

DSC05308.jpg
『総紗縫/神坂雪佳の世界』

 

 

そこを見ると流水は3種類あります(同じ紋を素材を変えて織っています)。
(一番上の少しザラザラした箇所①、真ん中のグレー掛かった所②、下の白に近い部分③。)

 

『味の回』でも触れていましたが、帯で使うものは天然繊維です。
目で見たり手触ったりしても全くわかりませんが、均一性が完全にあるはなくて、
ほんの僅かな太細はもちろんあります。

 

この流水部分は、その僅かな太細で地に『味に極めて近い』微妙なキズが出来てしまいます。

それが出てこない、又は隠れる様な織り組織であれば解決できますが、
この総紗縫はその辺り全く容赦のない、こまった織物です。

 

上で①〜③で上げた部分は、特にそのむき出し部分ですので、
おそらくこのまま織り進めたら、5本織って5本とも正反ナシとなりそうです。

 

以前はここで止まっていました。それを再びやり直しをしていますが、やはり詰まるところは一緒。
過去の自分と同じところで詰まった瞬間、その時のことをハッキリと思い出しました(笑)。

 

昔なかった地紋を地に入れることでほぼ解決できるはずですが、
今回、その地紋を知っていても過去通った道を完全再現してしまいました。
『作り手自体のモノづくりのクセ』は直らないなぁと感じました。。。
はぁ、、、です。

 

もう一柄、同じく雪佳があります。

つぎは過去の自分に負けないように頑張ります〜。

 

2015年05月25日

過去の難問 その1

 

まだ若かりし頃(笑)、途中まで製作した雪佳の総紗縫。

総紗縫の初期の方に製作したモノで、途中そのときの限界を感じ、しばらく寝かしておいた
モノづくりです。

 

スタッフから
『雪佳の総紗縫って作らないのですか?』と聞かれ掘り出してきました。
(先週掘り出して、目出しまでは織りました)

 

なにが問題か?というと、
単純に製品として織れない。そんな難問です。

DSC05302.jpg
『八橋/神坂雪佳の世界/総紗縫』

 

ブルーで織ったカキツバタの花の部分、ここの上げ方も相当怪しいモノですが、まだ比較的マシです。
他の部分の白濃淡は、織ってみないと分からないものの、おそらくこのままではキズだらけになります。

 

最後まで完成せず、止まっているのが改めて納得する状態です。

 

完成までまだまだですが、この柄の総紗縫がお太鼓にきたら、間違いなく素敵な着姿になります。

それを頭に置きつつ、心が折れないように、紋を修正していきたいです。

 

 

タイトルに『その1』と付けたのは、まだ同じ時期に同じく雪佳の総紗縫で止まっているのが、
この柄を入れて3柄あります。

 

今後、まとめて全部上手く行くかもしれないし、2柄だけかもしれない。
そんなのも抱えています。

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