となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > モノづくり業

2015年02月03日

ちょっと変わったモノづくりの話し合い。

 

今日はたまたまFacebookと被りましたが、半巾の話です。

ある3人の方から、『浴衣用の帯、作ってませんか?』
と聞かれました(皆さん、この業界ではありません。)。

IMG_0065.jpg

自分たちが浴衣から遠ざかっているせいか、最初は『えっ』となりましたが、
さすがに帯屋として『帯が無い』とは答えたくないので、
『浴衣には勿体無いかもしれないけど・・・』と枕詞を付けながら、
『無くはないですが・・・』と答えました(頭には京小袋を思い浮かべながら)。

 

でも、やっぱりとなみさんやし、結構いいもんですよね?
と聞かれましたので、『ありがとうございます。』と応えて終わるのもなんですし、
じゃ、折角なので、一緒に何か作ってみましょうか?
と返事から始めたモノづくりです。

 

詳細は聞きましたが、一応、その時に話をしていたのが、
販売価格からのコスト面の問題。

何をどう作っていこうか?と考え始めると、ほとんど頭から消えてしまう、
言葉です。

 

たとえば、コストを落とすと場合、まずどんな事が考えられるか?

糸の品質を下げる。
図案から、紋からサボる。
織組織を生地の状態を考えずに、筬打ちを甘くする。
そもそも、絹を使わない。等々。

 

これだけ考えるだけで、コストは落とせそうですが、
正直とても手間です(笑)。

 

まず、糸の置き場所を変えないとだめ。原糸の段階から倉庫の中の
置き場所を変える。もしも、染めた後に、混ざって織ってしまったら、
全てキズ物に。。。

 

図案や紋をサボる、これはイメージすると楽しめました。
人間って上手く出来ているもので、良くないものを作ろうとする
回路は元々入っていない様な気がします。物凄く時間がかかりそう(笑)。

 

織の段階でも、確実にうちの職人さんたちは、絶対にそんなん織れんと、
NGがでそうです。

 

そもそも、織物は絹以外のノウハウも無いし。。。

 

と、お酒の席でもあったので、逆のモノづくりで結構盛り上がりました。

それで、結論はとにかくイイ物を作ろう、でした(笑)。

 

半巾として、長さも短い、裏地の紋を改良したり、経糸の取り本数(何本織るつもりか?)
等でも随分変わるので、根本としての素材、配色等の見た目、織組織としての風合いには、
全く触らず、それ以外ところで、今の言われているモノづくりをしてもいいのかな?
とも思っています。

 

なにごとも、モノづくりの勉強になってくれそうです。

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2015年01月29日

青のバームクーヘン/作楽名古屋帯。

 

DSC00679.jpg
作楽/青のバームクーヘン/名古屋帯』

 

このバームクーヘン帯の仕立てが上がってきました(名古屋帯の開き仕立て)。

仕立て前も帯の柄、色、雰囲気はとても好きで、気になる帯でした。

そこに帯芯を入れ、仕立てることで最後に龍の目を入れたように、帯地全体の風合いが変わり、
芯の重量分は増えているはずなのに、手に持つ帯の重さも軽く感じました。

 

DSC04113.jpg

 

紹巴織で通常の機から名古屋帯を織るために九寸幅へと筬等を変え織る以外は、
本当にシンプルな仕様の帯です。

ただ、どれだけ手間や時間、コストを掛けても好きな雰囲気の帯というのは、
いつも目標としていますが、残念ながら狙ってもできません。

そんなこともあって、時々好きな雰囲気の帯を見ていると、帯づくりって難しい。
とつくづく思います。

 

 

 

これを書いていて、この柄は無地部分が多いからキズにならない様に、
織るのは本当に難しいですよ。とのツッコミも来ました(笑)。

 

2015年01月21日

七宝の帯

 

今まで多くの柄を作って、その中には自分的に殿堂入りにしたい、
お気に入りの柄もありますが、好きなのはシンプルなモノがほとんどです。

また、なかでも『七宝』と聞くと、なぜか気がそちらへ惹かれてしまいます。

七宝文様というと、おそらくここでは『南蛮七宝?』を思い浮かべて、
もらる方が多そうですが、
今回は『通常の七宝』話です。

 

ちなみに、元々七宝文様が好きで南蛮七宝も好きになったのか、
南蛮七宝にハマってから、改めて七宝文様を見直したのか、

今では自分も良く分からない状態ですが、南蛮七宝好きの方には
同じ様に、そのまま七宝文様も好きになってもらえれば、とても嬉しいです。

 

さてさて、
写真は去年織った帯、LACE(レース)をモチーフにしたものです。

 

DSC03860.jpg

作楽

 

これをそのまま七宝文様に活かし設計して紋意匠図を作りました。

前回の帯をベースにしていますので、ほぼ同じ問題が生じます。

大きなところでは、刺繍を細部まで完全に再現しようとすると、
経糸が表に出て来過ぎて、織物にキズがいった様に見えることがあります。

 

そのため、極限まで細かくし過ぎず、その手前で留める、完全に感覚の世界ですが(笑)。
作り込みはするが、してから、ちょっとだけ戻す、そんな感じです。


そして、あとは偶然性にある程度期待しながら、配色を行う。

前回の試験織りでは何度かやり直しましたが、経験が活きたのか、
今回は上の様な微妙な所で引っかからず、一度目で上手く行きました。

 

DSC04023.jpg

『作楽/LACE七宝』

 

ただ配色に関しては、帯一本で見ると、柔らかさが欲しいので、
少し白を落としても良いかな?と思っています。

七宝文様を作る白糸2本のうち、1本の糸をくすませる予定です。

そうすることで、帯締めなどの小物がこのくすませた方の色を拾いやすく、
なると思うので、コーディネートの幅も広がりそうです。

 

久々にLaceモチーフの柄ができました。

 

※その七宝で今まで製作したものは、こちらに一部UPして行っています。
 →Piterest『作楽』

 

 

 

 

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2014年12月15日

葡萄完成。

先日、Facebookにも上げていた、若冲の『葡萄図』、
表地織って、裏地織って、それを仕立てして、袋帯として仕上がりました。

 

IMG_3029.jpg
『若冲の世界/葡萄図』

袋帯の場合、表地に裏を付けて仮仕立てをしてみると、
『えっ?』と思うことも、たまにありますが、今回はそういうことも無く、
無事完成しました。

 

この帯のモチーフの好きなところは筆記体の様に、蔓がクルクルやひゅっとした
動きを感じられる所です。

この帯は他の織物から『織り組織の変更』をしたモノです。
その時の製作は図案とニラメッコしながらでしたが、今回に関しては、葉よりも葡萄本体は
置いておいて、『生の蔓』を凝視してきました(ただし瓢箪の蔓です)。

IMG_0872.jpg

若冲がニワトリを書くにあたって、何日も凝視し続けたことの何百分の一ですが、
今回の紬地の帯を織るに際して、意匠図をドット単位で微修正しています。

比べて分からない程度かもしれませんが、自分なりに活かしてみました。

 

一つの織物が織れなくなり、他の織物で織るために移管していくことは、
今の現状を見ると増えてくると思います。その際は、また意匠図を作らないといけませんので、
少しでも良くなるように、それだけしても全く同じ様にはなりませんので、
ある一面では優れている様に、できる限りのことはやっていきたいと思います。
(元の帯を超えれるも最近は増えてきました。)

 

ただいま、この織組織独特の『茶』がありますので、その色でも織っています。
色を変えて終了とは行かないので、もう少し掛かると思いますが、面白くなりそうです。

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2014年12月06日

しぼ織帯、一つ完成です。

 

先日、目出し状態で紹巴織から『しぼ織』に織りを変えた途中まで
紹介していた帯が上がってきました。
 →
http://goo.gl/yzbvjI

 

IMG_3142.jpg
『作楽/しぼ織』

 

この帯は一度織ってから、お湯の中に通すので、その分色味が変わります。
イメージとしては、全体の色が馴染み、印象が濃くなる。どんな感じです。

 

色の組み合わせによっても、変化の程度が変わってしまいますので、
作り初め初期は、手当たり次第試行錯誤でしたが、最近はほぼ予想通り行くように、
なりました。それで今回です。

 

また、タレには無地採用しましたが、ただの無地とは違って、地紋を少し入れて、
七宝文様にしぼが行くように、誘導してみました。

上手くいくか?最後の心配するポイントでしたが、
これはこれでこの帯の面白さになったかな?と思っています。

 

2014年11月13日

色の深みを織組織でつけてみました。

この頃(お盆)に製作していたものが上がり始めました。
 →http://www.kyo-tonami.com/godaime/2014/08/post-1998.html

 

一つは、この柄。

 

IMG_1753.jpg
『作楽/しぼ織』


少し前に、紹巴織で織っていた『青』が頭に残っていましたので、
その色をベースに色が生きそうな柄付けに、しぼ織りという織り組織を変えてみました。

紹巴で織った時は、月がモチーフの柄で、自分の中では夜空の色を作ったつもりでしたが、
柄の空気感からか、透明感のある色の表現を沢山の方から、頂きました。

たとえば、

明け方になり始めた頃の青、とか、
宝の方の石の青とか、
月の明るい時の夜の海の色、

こんな感じで、いくつかはメモさせてもらっています。

 

しぼ織は、御召緯を使い広巾で織ってからお湯に付け縮めるという過程がありますので、
どうしても配色した色そのものとは、異なってきます。その辺りも考えつつ、作るのですが、

このモノづくりでしたかったのは、この色を使いつつ、しぼのメリハリによって、
『青』の濃淡ができる。ということです。

 

IMG_1754 -3.jpg
『タレ無地部分』

 

しぼが隆起していますが、この一番山の部分と谷の部分とでは、光や見る角度によって、
濃淡は変わりますし、また着物や小物、合わせる色によっても、おそらく変化してくれる
と思います。

その時、またこの帯を見た方がどんな色をイメージして下さるのか、
とっても楽しみです。

 

特にタレ無地部分は、とても良さそうな色に。。。

 

 

 

 

 

2014年10月31日

気になる織物経錦。

 

となみ織物のメイン組織の一つでもあって、昔ずっと担当として関わっていたので、
紹巴織は今でも色んなチャレンジをしたくなる織物です。

その紹巴織は緯の織物⇒基本的に経糸は単色無地で、緯で柄を織り成していきます。

そして、その紹巴織とは反対の考え方に『経錦』(経で柄を作ります。)があります。

となみ織物では基本構造は『経錦』と同じで、そこからデメリットを無くす改良を加えた
『漢錦』という織物の名前で製織しています。

ちなみに、この丸巻きが自分の横にあったりすると、何かの会話の途中でも、
無意識に触って巻き直していたくなる、とても気になる織物の一つです。

 

丸巻きでも気になりますが、今日上がってきたバッグを見ると・・・

IMG_1423.jpg
『漢錦/ほわほわバッグ』

 

織物としての陰影が普段見る感じよりも、さらに強調されて見ることができるので、
もっとこうしたら、面白いものができるとか、特性を活かして作れそう、等々、
モノづくりをしていきたくなります。

 

特に今は、頭が緯中心の紹巴織状態ですので、触ったから、こんがらがりながらも、
面白いものができそう、です。

 

やろうかな、今あるもの終えてからかな、という間に挟まりながら、
今日は経錦の反物を巻いていました。

 

 

2014年10月30日

しぼ織でも作ってみました。

 

図案、意匠図、目出し、そして最後は『帯』となる工程上、モノづくりする際は、
図案の段階で、絵を見ながらこれはどんな組織が相応しいか?ということを検討します。

 

細かい表現で物理的に織れるモノが限られてしまう場合、ボリューム感がほしいから、
それに相応しい2つもしくは3つの織物から選ぶ場合、季節感を柄だけでなくて、
生地としても求める場合等があります。

 

また、今回の様に一度一つの織物で作ってから、その織物で結ばれた所を見たり、
帯にした所から、その柄の違う魅力を見つけた時などは、再度意匠図を作り直し、
同柄でも異なる織物の帯をつくります。

 

IMG_1313.jpg

『紹巴織⇒しぼ織へ』

それがこの柄(の一部)です。

 

むかしは、こういうモノづくりの際、元の織組織のモノよりも上手く作ろうと
ちょっと気負いながら、でしたが、今は元は気にせず、柄自体から見つけた、
新しい魅力を帯に出そう、そのことだけに意識を集中させ、作っています。

 

細かい変更点は山ほどありますが気に入っているのは、しぼ織のシボに埋没しそうな、
金糸の色をかなり当初のモノよりも黄色くしたところです。

 

最終帯になった際に付くシボが印象的に表に出るように、
タレ無地の地紋、黒の使い方、等々、他にもありますが、今回は細かいですが、
黄色の金糸がポイントになってくると思います。

 

まだ、織ってお湯に通して、再度帯巾を整える、という
大きな山場が待ち構えているので、どうなるかわかりませんが、
良いレールの上を乗っているようには思います。

 

2014年10月25日

『総紗縫・黒』続き

 

総紗縫の黒を作り始めてから、少したちました。

最初は真っ黒が難しいということで、濃い濃いグレーの辺りで止まっていたものが、
今では雑誌でも紹介出来るように、真っ黒ができてしまいます。

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記事へ

 

何も無いところに作るのは非常に難しいですが、ある程度土台ができてしまえば、
その上に積み上げるのは、0を1にするよりは難しくありません。

 

それがメーカーの特性で、一つ完成したら、また0から何か新しいモノを作ろう!
(満足感も高いので)となってしまいがちですが、積み上げて行くのも、ここでいうと、
柄を組織の上に乗せていくということも、簡単なことではありません。

 

また、土台の上に乗せる方法も、ただ単に今まで積み上げてきた事の延長では面白く
ありませんので、やはりその時の自分の色や考えをモノづくりの中に入れていきます。

 

以前、美しいキモノで発表したものが、
写真のような3種類、テーマを変えて製作しましたが、この時は『総紗縫・黒』の
可能性を探るために、色々とやりました。

今回作ったものは、上手いこと行ったモノは踏み台に、失敗した所は再挑戦の意味も
込めて、再度モノづくりしてみました。

 

IMG_1107.jpg

 

このようにシンプルに見えるモノの中に、今考えられる工夫をいっぱい詰めて作った
『総紗縫・黒』です。

 

透け感の関係で、持ち上げると輪唱の様に柄が付いてきます。

IMG_1109.jpg

 

着物、小物と合わせて結ばれたところを早く見たい帯です。

 

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2014年10月23日

久々に完成品を。。

 

最近帯をアップする際、ここでは製作途中のモノばかりでしたので、
一番最近完成した『BOTANICA』シリーズの帯を紹介します。

 

IMG_1002.jpg
BOTANICA

 

図案はありましたが、それよりも紋を作る際に気をつけたのは、色を重ねること。
紹巴織が得意とする、『染み込み』『ミックス』という技法を最大限に利用して
(そういう設計で)とことん糸の生の色が出ないように、しています。

 

実物を見てもらうのが一番ですが、最近の中間色を多用する配色からしても、中間色同士を
重ね重ね色を置いているので、どの色一色とっても、なかなか『何色』と言えない帯です。

 

さらに、というか最近自分のモノづくりの中でよくする、無地部分にも単なる無地ではなく、
ベージュに白にもう一色グレーを足して、三色で無地一色に見えるように作りましたので、
多分、着物と合わされるときには、吸い付くように着物の色を拾ってくれると思います。

 

これらの色は先日奄美に行った時、曇り空に色味がボヤかされながら、下から力強く
でてきた色が自分の頭の中にイメージとして残っていましたので、それをベースに
配色されています。

 

もちろん、織りの袋帯です。

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