となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > モノづくり業

2016年06月08日

御召作り『Kilim』 その1

仙福屋が作る着物で、夏単衣という季節を絞って制作しているモノがあります。柄的に色々と制約があって、なかなか新しいモノづくりが難航していました。『それよりも、もう一方の方を・・・。』と自分から避けていたこともあります(苦笑)が、今の時期やはり、人気が出て、毎年毎年、その人気も少しずつではありますが、右肩上がりです。

そうすると、もう一方を・・・とも言ってる訳にはいきません。案もあるし・・・。やるか・・・。
と決して嫌ではないのです(笑)が、とうとうスタートしました。

現状のシリーズにもある『Kilim(キリム)』の帯図案を活かしてのモノづくりです。

元々のKilimは織組織は『総紗縫』が中心。配色も非常に綺麗な色が多く、個性的な帯が揃っています。→PINTREST参照

それを元に作りますが、色にイメージが引っ張られないよう、頭の中はこんな風に白黒に。

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ここから着物としての柄のサイズ、意匠の方向、織りの見せ方等々を検討していきます。基本的に帯と着物の柄とは違いますので、この段階で良いと思っていたものの多くは弾かれ、再度織物として織れるのか?どこをデフォルメするか、そこを詰めて、進めます。

今日はまだ最初の段階。仕上がりはまだ先ですが、いいものができそうですよ。
一度、進めだすと、楽しくなりますが、それまでは非常にハードルの高いモノづくりです(苦笑)。

2016年06月07日

第一段階通過中/Candy Circus3

完成まで遠いので、まだ全体のUPは遠慮させてもらいます(楽しみはもう少し先に・・・ 笑)。紋作り(意匠図づくり)に『もう大変やわ。』と何回言ったか分からない(苦笑)、苦労した柄です。なんとかまず形になったのが、嬉しくて一部ですがUPしてみます。

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『Candy Circus3』

織物は、自分がよく使うお馴染みの『紹巴織』。となみの中でも細密さと色の発色が綺麗。表現力も抜群。図案から帯にする際、イメージし易い。十何年ずっと毎日の様に作ってきましたので、性も合って、好きな織組織です。

(昔から)『この織物は凄い完成度やけど、もうこれ以上(新しいモノを作るのは)無理じゃない?』と言われ続けてきましたが(多分初めて、それを聞いた時から10年は経ってます 笑)、今でも毎年新しい手法・技法を作っては、既存のモノとくっつけて、新しいモノづくりにしています。

今回の意匠(後日織物で紹介しますね)を紹巴織で織った理由は、特長と同じで、発色や多様な色を作れること、緻密さ(何回も繰り返すほど、凄いレベルのことが出来ます)、本当に武器です。これらを他の織物で似せようと、と思っても、その差は大きいです。

今回はその武器に振り回されました。糸同士を混ぜ、沢山の中間色を作ろうとしたため、収集が付かなくなり、時間ばかり掛かる。元々の意匠の色数を忠実に作ろうと、頭の中でこねくり回して、紙の上で試行錯誤の繰り返しでした。

まあ、どれだけ時間を掛けて万全を期して挑んでも、第一回目の試験織を見るまでは、失敗することは大いにあります。今回は、最大限力を尽くして、それ以上はどうしようもないので、後は待つ。そういう心境でのモノづくりでした。だから、試織が上がってきて、まずはホッとしています。

さらに思ったよりも、色が濁らず、修正は必要にしても、『あ・・・。ヤバイ・・・。』ともなりませんでした。心は折れず(苦笑)、明日早速修正だ、と思えましたので、この帯の完成は意外に早いかもしれません。

とは言っても、形になり始めたのは、まずお太鼓だけですが・・・(笑)

2016年06月03日

人気になりつつある、総紗縫の縞。

最近人気の『総紗縫の縞』。
昨日、FB上に着姿をUPしていましたが、写真でもやっぱり皆さんから良い評判を頂いています。

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FB(6月2日)

帯の製織からすると、通常(西陣の場合)経糸は一色の無地(下記写真の様に)が多いです。

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柄や色は緯糸(横糸)で織り成します。
例外的に、となみでも1200経錦(リンク)や二重織がありますが、だいたい西陣はそんな感じです。
だから、一つの経糸で沢山の柄を織ることができます。反対に縞柄の場合、経糸の段階で色糸を縞になる様に並べて作ります。
そのため、一つの経糸からは基本的に一つの縞柄しか織れず、その経糸が機に掛かっている時は、基本的にそれを織り続けることになります。

総紗縫の場合、またもう一つ山があります。それは製織段階で総紗縫独自の繊細なバランスを考える必要があります(細かさや糸同士の綟りなど)。そのため、少しのバランスが崩れるとキズになりやすく、そのほとんどが致命的なモノで、商品にはなりません。経糸を縞にすると、そのバランスがホンの僅かにくるってしまうので、織る段階でまた問題を抱えてしまうことになります。そういうこともあり(そこまでしても、あまり注目されていない縞柄は避ける傾向に)、柄数は増えていませんでした。

ただ、最近は総紗縫2本目、もしくは三本目を持とうと言って下さる方が増えてきてきました。その時『次は雰囲気の変わったモノを・・・。』と言われ、ほそぼそと作っていた(笑)縞に注目が集まっています。

いつもよりも気を払わなくてはいけない、総紗縫の縞。周りの雰囲気で新しい柄も起こされようとしていますので、自分ももう一度触れようかな・・・。それとも『5年後の総紗縫』のモノづくりとお題を立てて、違う表現方法で、新しい魅力を探そうかなぁ、と考えています。

2016年05月28日

帯地の使い方。シンプル数寄屋袋。

今日は5月第4土曜。会社は営業日です。最近は営業スタッフは出張が多くなり(本当にご苦労さまです)、曜日感覚が薄くなっていますが、京都でのモノづくりは、一応土曜日ストップします。その間に、やらなくては〜!と溜りに溜まっていることを進めて、少しでも来週に向けて軽くなるように頑張る日です(笑)。

そうは言いながら、じゃ、今日は一日落ち着いて仕事ができたか?というと全くそんなことはなくて(苦笑)、結局はバタバタ終わってしまいました。落ち着いた時間といえば、一ヶ月ほど前に、依頼を頂いた小物が上がってきてたので、それをショールームで見ていた時くらいかなぁ・・・。

ちなみに、この数寄屋袋作りも、今進めていることの一環の一つ。それは、帯のモノづくりではなくて、帯を使ってのモノづくり。今までも制作していましたが、今回のモノは縫製、形状を見直し、簡単にシンプルにしました。

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【数寄屋袋/プチ仙福屋】

仕様を見なおしたのは、なぜか?

皆さんから、色々ご意見を頂きました。『もう少しカジュアルに持ちたい。』『プレゼント用に・・・。』それに加えて、できるだけ帯を日常に加えれるように。使う用途、使い方、コスト面も含めて色々と検討していきます。

今まで通りのモノも作りまし、どちらかと言うと、帯地の裏糸の処理等を考えると、この辺りも上手く住み分けはできそうです。今週もなんやかんやと、やっているうちにもう終わってしまいました。来週も手帳を見ているだけで盛り沢山です。

2016年05月24日

雀形七宝、初披露

先日FB上でとても評判が良かった名古屋帯『唐長文様/雀形七宝』。社内で着物に合わせて色々とイメージを膨らませていましたが、やはり実際に身体に帯を巻いてもらうのが、一番です。

合わせるモノは、『南蛮七宝文様/夏・藍大島紬』。これもまた最近上がってきた、面白い曰くつきの着物(苦笑)。

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『南蛮七宝文様/夏・藍大島紬 ✕ 雀形七宝(名古屋帯)』(七宝の中に雀が・・・)

名古屋帯は袋帯と違い、裏地を必要としない分、コスト的には下げれますから、柄や色を思い切って遊ぶことが(袋でもやってましたが・・・ 笑)し易い形態です。となみの生産数量からすると、名古屋帯はほんの僅かしかなく、織る際は筬の巾が違う(八寸二分or九寸)ので、今ある全ての織組織ですぐに、袋帯→名古屋へと移行できるわけではありませんし、袋帯の裏地も含めた世界観もとっても楽しいモノづくりです。

ただ、こんな感じの名古屋帯の世界をもっと広げることで、ここから『となみ帯/織物』に触れて頂ける機会が大幅に増えるのかな?と、この帯の評判を見たり聞いたり、実際に目にすると、そう思いました。数柄待機していますので、少しずつ進めていきますね。

2016年05月18日

織物の色について・・・。

 

織物は、経と緯の糸だけで柄を織り成しますが、多くの種類の織組織があり、その違いで同じ色を使っていても、発色は変わります。経が主に織物の表面に出る、または緯糸が・・・、の違いでも発色は全く異なってきます。また糸を筬で打つ密度(打ち込み)によっても、変わってきます。

自分たちが行う主たるモノづくりは、図案を見ながらの意匠図作りです。帯づくりの要素は、色・柄・組織。
その主な部分がこの意匠図づくりで、決まっていきます。ですので、この後の工程・意匠図を見ながらの『配色』段階では、多少の修正はできても、意匠図の後悔や失敗はなかなか取り戻すことは難しいです。

 

まあ大成功の部類に入るくらい上手く行っても、出来上がってから『こうしてればよかった〜。う~ん。』ということはいつもですが・・・(笑)

 

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参照:意匠図/百人一首(FB記事へ

 

たとえば、現在シリーズを作らせてもらっている『CandyCircus』の帯。
元となる作品の色はそのままを織物で出すのは、ほぼ不可能なので沢山の色を意匠図段階で混ぜに混ぜ、作り出しています。遠くで見るとそう感じなくても、近くによると、目で見える色とは少し違う色が重なり合って、一つの色を作り出していることが良くわかります。

 

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この帯を作る際には、今までやって来なかったことを試していて(輪郭にもなっている、黒緯部分)それがこの帯の特長にもなっています。この帯は8月に発表予定で、まだ実際の評判をそこまでは聞いていませんが、細部がどうのよりも全体の帯に漂う雰囲気に今まで異なる感じを受けられる方がおられます。

 

色を作ろうと考えてやったことが、全体の雰囲気も左右していく。まずの第一印象は、色に目が行くと思いますし、織組織的なモノづくりとともに、その辺りも意識して自分自身がハマっていきたいところです。
 

 

 

昨日は色について考えさせられるモノを見続けることができましたでの、今日改めて意匠図と織り上がりの帯を見ながら、後悔じゃない、前向きな反省をしています。この辺りがモノづくりの楽しいところですね。ホントに。

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2016年05月14日

金銀と紬と経の箔

 

先日、紹介した『角花』の意匠を使ってフォーマル地の試験しています。

 

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3種類3色、すべて素材を変えて織ったところ、ギリギリ織れたのが、上の2種類。
ほかは全滅です
(数センチが織れないモノもあり)。金銀糸は通常の糸よりも太いものを使い、経は箔、打ち込みも多く入る、と何かをイジるには条件が悪すぎるので、ある程度予想はできました。そのおかげで、この一回目の目出しで、(いつもだったら何回も取る必要があり)ある程度の限界が掴めたので、満足しています。

そして、この生地作りが間違っていなかったら、次は色。

『金糸』が立ち過ぎると合わせにくいし、経の箔とケンカする、立ち無さ過ぎると、この帯の風合いを作る&金色をグッと抑えている『紬』が前へ出てくるので、フォーマルらしさが薄れてしまう。こんな風に、最近はデジャヴの様に、対極の2つのバランスを取るような仕事ばかりしている気がします(笑)。

 

まだ、織り見本の初期ですが、ちょっと無理して一本目を織って頂いていますので、次はそれを見て、軌道修正を行いたいです。もし、その生地が想像と違う結果になっても、フォーマルバッグ用として『今まで無かった感じで、抜群にいいんじゃないか?』とも言われていますので、そっちの方も視野に入れておきたいです。

 

ここ2週間、ずーっと色んなことが詰まっていたので、ちょっとバテ気味です(苦笑)。。。

2016年05月11日

色の整理=廃盤作り

 

試験織(目出し)というと、初めて織る織物の具合をチェックすることです。
意匠図を作った後、それがこちらの意図通り織れているのか?を見ます。ごく稀に頭の中では全く気付かなかったこと、例えば十センチなら何とか織れても、帯一本分は織れない、ことがあることも。綺麗に織れた様に見えても、織りクセが出ていたり、と意匠図(=設計図)が出来たと安心していても、意外にチェックすることは多いです。

 

そして、この試験織のもう一つ目的は、色を見ること。意匠図作る、織りのチェックする、問題ない、じゃ次はというと・・・。
具体的に色を配置して、全体としてどういう色の雰囲気を織り出せるか?の確認で織ります。そして、帯は大抵の場合、イメージの中にある色を何色か試して、そこから1色もしくは2色くらいに絞って、最終帯を織ります。

これが織りの場合、(特にうちは文様がシンプルなモノが多いですので)10数色を織ってから、どうしてもダメなもの以外は残します。いいモノを残すか、ダメなものだけを省くのか。帯と着物の配色選択、アプローチとしてはちょうど反対です。

 

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『輪宝文様/着物試し織』

 

さらに、新しい地色の帯が出来ると、そこに合わせる着物の色を増やしまいますので(苦笑)、気がつけばエライことに・・・。例えば最初は5色でも時々の追加で、いつの間にか倍の10色になっていることもあります。

 

そんなこんなでモノづくりとして増やしていくのは良いのですが、あまりに増えすぎると『えっ、こんな色織ったかな?』になり兼ねませんので(台帳を見れば分かりますが、それではダメですし・・・)、その色数を整理をしていました(これではイカンと、かなり久しぶりに)。

 

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『濃地の選択中』

 

まずは、南蛮七宝文様から。最初に色数を決めた時から追加していく度に、真剣に選択しての20色を超える色数です。
絞る(=廃盤を作る)というのは、至難なことでしたが、結果14色(薄地7、濃地7)に。

 

また少しずつ色が増えて、それを絞る。それを繰り返して行き、その時に応じた色を常に意識して、織ってしまったものはそのまま、という惰性のモノづくりに成らないように、手を入れて行きたいです。選んだ色はまた、見て頂けるようにしますね。

2016年05月09日

ざっくりとした注文を頂いたところから・・・。

 

『こんな感じの柄でこんな感じの色』と、相当ざっくりとした御召の注文(笑)を頂きましたので、まずそのための見本を織ってみました。夏に近づくにつれて、御召の場合限定ではありますが、圧倒的に薄い地色に人気が集まります(帯や他の着物はそうでもないのが、また面白いところ)。

 

その見本裂地です。

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写真の部分で6柄2配色あります。

 

この御召は総紗縫や上品綟のように綟って透け感を作っているのではなくて、緯糸と地紋の工夫と改良で風を通す夏単衣モノに仕上げています。反物を下に置くと、透け感が少なく色の重さを感じますが、着ることをイメージして、写真の様に反物を立てると、濃い緯を通して織ったにも関わらず、透け感を感じることができますし、『これだったら夏に濃い色の着物を着てみようかな?』と思って頂けると思います。

まだ、今のところ出来上がってから日の浅い織物でもありますので、薄地が一通り人気が出た後は、この濃い地色の方で・・・。と画策しています(笑)。

 

薄地色のも含めて、この織物が反物になるまで、試作の繰り返しでした。自分でもプロトタイプのモノを着ていて、完成版は良いなぁ・・・(笑)と、思い入れも沢山(柄によってはこの織物に全く向かず、織れなかったとか)のあるモノですので、大事に紹介していければと嬉しいです。

 

今年はいよいよ自分用に濃い地で作ろうかな〜。

2016年05月07日

南蛮七宝文様/夏大島・藍の一反目織り上がり。

 

奄美の職人さんから『原料あるけど、織ってみる?』と話を頂いてから(返事は『もちろん、お願いします!』)、数ヶ月。完全に忘れきった頃に(苦笑)上がってきた南蛮七宝文様/夏大島紬、の正藍です。

 

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(どうも写真では上手く伝わりませんので、またこれに関してはチャレンジしますね。)

 

夏の場合、糸が通常のものと異なり、いつも通り織れないため、奄美大島では夏の織り手さんがほとんどおられない。今では『幻の大島』と言っても良い着物です。南蛮七宝文様では、以前『白』を織ったこともありますが、一経を織り切るのに、優に一年は超えていました。今回もそれと同じか、それ以上の手間を掛けてのモノづくりのスタートです。

 

この南蛮七宝文様の大島紬シリーズは全て限定での製織(4もしくは8反)で、人気があるから再び製作をする。そういうことは全く無い(というよりも出来ない)ので全て売れてしまうと、手元には写真しか残りません(やはり写真頑張らないとダメですね 笑)。個人としては、一反ずつくらいは資料として残しておきたいですが、着物は、やはり手を通してもらってこその着物です。

 

この藍に関しては、もしかして一疋(2反)のみしか製織できないかもしれません。
今までのモノもそうですが、この藍は、どんな方が着られるのか?できれば、着姿の写真を撮らせてもらいたいなぁ・・・。と想像しながら、反物を巻いていました。

 

Facebookへは反物の上に帯をのせて、またUPしたいと思います。

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