となみ織物の五代目のブログです。『帯』や『織物』を作るメーカーですので、内容はモノづくりが中心になっていると思います。自分で読み返して結構納得することもあります。

五代目日記 > 唐長

2016年08月19日

色をメインに。

今までに無いイイ色を作りたい。と試験を繰り返しながら制作しています。

色というと、今では定着した『となみブルー』もそうでしたが言うのは簡単、
そこに至るまでの、作る・発見する・使う&使える。ようになるまでには、試行錯誤の連続。

この制作方法で着物は、今までもちょこちょこ登場していますが、試行錯誤を繰り返し、段々と形になりつつあります。


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『南蛮七宝文様/御召』


今までのモノをご存知では無い方のために、まず通常染めの着物は白生地を使います。
白(または生成り)の上に色を置くため、染めあがりの色は当然予想し易いです。

今、制作しているモノは、元々色の入っている先染めの着物(これだけで製品として成り立つ)の上に色を加えて、 元々ある色が底から照ってくることを想像しながら、深い色を作る。

そんなモノづくり。特に今回挑戦したのモノは、底にピンク色があり、その上からグリーンを足す。

料理だと隠し味に、りんご、チョコレートでコクを・・・。イメージとしては一緒ですが、なかなか思い通りに行かず、 最終のブレ幅も大きいので、苦戦中。

また、この着物の場合、同じものは作りたくありませんので、完成する度に異なる色を作る。

そのため、経験も蓄積されにくく、失敗も未だにあります。
それでも少しずつは欲しい色が作り出せてきました(現状5反のうち、失敗は1くらいです)。

帯が最大限にイキイキしてくれるイイ色作り、帯作りと同じくらい力を入れていきたいです。

2016年07月29日

輪宝文で紗を織ってみました。

帯にするかは、ちょっと横に置いておいて、まず色んな試験を取ってみました。

輪宝文』の総紗縫です。

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唐長11代目奥様好みとして、最近物凄く注目されている意匠。
最初の帯は紹巴織で織りました。

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この帯は、南蛮七宝を陳列する際には常に一緒に持って行きます。
唐長文様同士をコーディネートしたりもしますが、この輪宝文、
気がつけば自然に他の着物の上にコーディネートされ、上手く着姿の顔になっています。

その様子はかなり自然に。
文様としての主張はあるのに、どこでも馴染んでしまう。
唐紙で頂いた異なる配色もありますが、全部そんな感じ、ホントに不思議な柄です。

今回は一番上の写真。
総紗縫の輪宝文の試験です。目出し(試験織)で取ったのは6つ、横段になっている部分です。
色と素材を変化させて、柄の見え方、色の出方、素材によっての帯巾は?透け感は?
等々、1つずつ様子が違うので、チェックしていきます。

生地として織り上がっているので、モノづくりの終盤に見えるかもしれませんが、
全体を100とすると55〜60くらいの中盤です。

最初に織った紹巴織とは違い、各織物には表現力に限界、得手不得手があります。
今回の仕上がりを見て判断するつもりでしたが、この総紗縫の帯に関しては、今のところ無地に近い感覚で、
全体の色目を今まで無いような【青】を使って、モノづくりする。そちらへ持っていくつもりです。

おそらく帯まで持っていけると思いますので、仕上がりを楽しみにしていてくださいね。

2016年06月01日

左うちわ/輪宝文袋帯

本社向かいショールームの入り口には、きのう唐長さんより届けていただいた『輪宝文/左うちわ』を飾っています。

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この輪宝文は唐長さんが所蔵される650柄もの中で、最も吉祥文が集った最高に縁起の良い文様です。
また、さらに11代目奥様好みの柄でもありますし、南蛮七宝文様に近い思い入れがある意匠になってきました。

この輪宝文で帯を制作する何度も修学院へお邪魔させて頂いていましたが、その時もこの左うちわの話は何度か伺っていました。特に奥様の郁子さんが言われて印象的だったのは・・・

『このうちわを左手に持ってあおぐと風が幸せを呼ぶの。』

それが頭に残っていますので、ショールーム入り口に置き、そこから幸せを呼ぶ風が入ってくるようにしています。確かに、じっとこのうちわを見ていると・・・。眺めているだけでも、そんな気持ちになってきます(笑)。

そして、この『左うちわ』の向かい側には、うちわの唐紙を元に製織した『輪宝文』の袋帯を置き、

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入り口から入ってこられた方をこの2つで挟み込む様にしています。

相乗効果でさらに幸せを感じることのできるかな?もし、京都に来られる際には、ぜひ『うちわと帯』に挟まれて幸せを感じて頂きたいです(笑)

他にも、近々郁子さんの本も届きますので、しばらく唐長三昧になりそうです。

2016年05月16日

三条店のピアノ・・・

 

先日、唐長三条店で12代目と打ち合わせを行いました。

 

三条店の現状はというと、ド真ん中にあったピアノを移動されたので、そこに広大なスペースが空きました。普通、家やお店であればポカンと空いたスペースに違和感を感じるはずなのに、店全体の雰囲気+周囲唐紙だと、そのスペースが埋められ、最初からそうだったような気になります。気がついたとしても、これはこれで良いな。と、そんな気持ちになってしまいます。

実は、あれだけお邪魔した私も今回、ピアノの件は知っていたはずなのに、スルー。帰りにそういえば・・・と気付きました(苦笑)。自分に観察能力が無いのか、唐紙がすごいのか、未だに三条店の雰囲気に酔ったのか?わかりません(笑)。

 

そんなこともあって、今並べている帯や着物、小物の陳列をお店に合わせたものへ見直したいと思います。
あるもので十分対応できるもの、新しく作ったほうがいいモノ、等々の打ち合わせです。

 

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【三条店 新しいカメラの試撮 左後ろには南蛮七宝巾着】

 

 

また、新たなモノづくりも始まりますので、しばらくはドップリと唐紙の世界に入って行きたいです。

2016年05月07日

南蛮七宝文様/夏大島・藍の一反目織り上がり。

 

奄美の職人さんから『原料あるけど、織ってみる?』と話を頂いてから(返事は『もちろん、お願いします!』)、数ヶ月。完全に忘れきった頃に(苦笑)上がってきた南蛮七宝文様/夏大島紬、の正藍です。

 

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(どうも写真では上手く伝わりませんので、またこれに関してはチャレンジしますね。)

 

夏の場合、糸が通常のものと異なり、いつも通り織れないため、奄美大島では夏の織り手さんがほとんどおられない。今では『幻の大島』と言っても良い着物です。南蛮七宝文様では、以前『白』を織ったこともありますが、一経を織り切るのに、優に一年は超えていました。今回もそれと同じか、それ以上の手間を掛けてのモノづくりのスタートです。

 

この南蛮七宝文様の大島紬シリーズは全て限定での製織(4もしくは8反)で、人気があるから再び製作をする。そういうことは全く無い(というよりも出来ない)ので全て売れてしまうと、手元には写真しか残りません(やはり写真頑張らないとダメですね 笑)。個人としては、一反ずつくらいは資料として残しておきたいですが、着物は、やはり手を通してもらってこその着物です。

 

この藍に関しては、もしかして一疋(2反)のみしか製織できないかもしれません。
今までのモノもそうですが、この藍は、どんな方が着られるのか?できれば、着姿の写真を撮らせてもらいたいなぁ・・・。と想像しながら、反物を巻いていました。

 

Facebookへは反物の上に帯をのせて、またUPしたいと思います。

2016年05月06日

まだ帯になるか、わかりませんが。瓢箪柄

 

タイトルの通り、試行錯誤している帯見本です。
柄は唐長さんより、瓢箪。それをとなみ史上、経糸最多の二重織を使って織った織物です。

 

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基本は経糸の色で柄が作れますし、それで文様全体は(特にシンプルな柄ですので・・・)織る。そこに緯糸を通して色に深みと、地風を作る。帯としてのベース部分のモノづくりになっていますし、非常に地味(笑)。ですが、一番か二番めに大事なところです。時間は掛かるかもですが、まずは納得の行くものを、と思っています。

 

それに加え今回は、出来る限り織りやすいモノ=皆さんに気軽に結んで頂けるモノを心がけていますので、特にこのベース部分をしっかりして、織りはシンプルに。もし、このシリーズからとなみ帯に入門者(?)された方には『帯って、こんなに結びやすいんだ!』そんな気持ちになってもらえる様にする、それが目標です。

 

そのために、経の配色、緯糸の配色、それらのバランスで、今後製作していく配色の基本色を作っていきたいです。

 

やりたいことは、一杯ありますので、一つずつ漏れて後戻りが無いように(これが怖い・・・。)、進めていきます〜。
また、詳細はここでご紹介できると思いますので〜。

2016年04月29日

見てもらい意見を頂いています。/Obi çlutch(帯クラッチ)

『ObiClutch(帯クラッチ)』ひとつ目の形が完成しています。
現在は、皆さんに見て、触って頂いて、ご意見を頂き、または注文を頂いたりしています。

一応、クラッチバッグとしての用途を考えていたのですが、試験に使っているモノが、新しいMacBookを入れるのにピッタリ。

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当初の目的以外で、今は試験的に使っています(笑)。

 

こうやって、色んな所にもって行くと、中身がほしいという方もおられますが、そこは普通に手に入りますので(笑)、その話は横に置いておいて、帯クラッチに関して、こういうのが欲しいという意見を頂きました。

それは中の色。
今はベージュ地の生地を使っていますが、『そこへ『赤』系の帯地を使って欲しい。』そんな依頼でした。

 

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『錦地裏地』

 

それを今から形にしていくモノに、正式に採用するかはわかりませんが、仕立て上がり後の具合を見るためにも、現在は試作を製作中です。こうやって一つずつステップを上がって行きたいです。

 

また、お知らせしますね!

2016年04月25日

夏らしい新色/南蛮七宝文様/総紗縫

 

機が空かなかったため、予定より約一週間遅れましたが、南蛮七宝文様の総紗縫・新色が上がってきました。夏らしい(オールシーズン帯なんですが・・・苦笑)色目で、とても新鮮です。

 

ちなみに、この文様で総紗縫を織ると、構造としては一番シンプルな形です。帯の色に影響する要素は、『経糸、緯糸、箔』の3つだけ。(糸の本数等々の話を除けば)基本的にこれだけで色が決まります。ただし、一番シンプルと言っても、この総紗縫は、独特な綟り織りですので、透け感も特殊。それに加えて、素材の箔も独自のものですので、横に通す糸の色味は、透け感と箔に持っていかれ、非常に仕上がりの予想を立てにくい織物です。

 

今回、織った帯の色目と織り上がりの帯を見比べると・・・。
色味はこれくらい違います。

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『南蛮七宝文様/総紗縫』

 

箔を使わない『KILIM(キリム)』等であれば、もう少し糸に近い色で、クッキリと色を出すこともできます。が、見る角度や光によって、この南蛮七宝文様が消えかねない、それくらいの柔らかな色をイメージしていましたので、この2色はとても上手く行ったと思います。

 

ただ、南蛮七宝文様の紗に関しては色ごと限定3本しか織りません。上手く行ったと満足して止まっていると、その後は直ぐに新しい配色を考えること、というのが後ろから迫ってきます。単なる配色変更だけにしても、常に色のこと、モノづくりを考えておかないと、自分の中の色ストックが無くなってしまいます(苦笑)怖い話です。。。

 

この帯に関しては、後これから2本ずと織り上げていきますが、織り上がり後、機が空いている間等々を考えると、時間は全然ありません。写真のように色糸のイメージだけでは織り上がりも異なりますので、色を考えて、試験取って、修正をして・・・と考え過ぎると、ヤバイ時間が・・・となってしまいます。

遅れるのは良くありませんが、色々と横に置いておいて、新緑の自然の色を眺めながら、色出ししてと、GW中は多少でもゆっくりと考えたいですね〜。

 

まずはこの2色、夏に結んで頂けることを楽しみにしています〜。

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2016年04月11日

『アンティークと唐長の世界』展

 

9日(土曜日)には、京都の『ギャルリー田澤』さんへ。
唐長11代目のギャラリートークへお邪魔してきました。

 

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『アンティークと唐長の世界 4月7日〜22日』

 

ギャラリートークでは11代目から、
ケルト・アイルランドから始まる文様が時間を掛けてユーラシア大陸を渡り、日本へ。
日本とアイルランドには1万キロ以上の距離が離れているが、ほぼ同様の文様がある。
アンティークと唐紙との相性の良さ。
唐紙を感じるのに、必要な光の話、等々。

今まで何回か聞かせて頂いたことのある話もありましたが、実際に唐紙とアンティークがコラボとして形になった姿を見ながら、唐長や唐紙に対して多大な興味を持たれている方々が30名集まり、一緒に聞く、その空気感は格別に良かったです。これはついでですが、自分も南蛮七宝の御召(薄ベージュ)を着ていたせいもあって、作品にはなれないまでも(笑)、他の方よりも作品に近づくことができた、ちょっと特別な時間を体験してきました。

 

今回の11代目の話にも出てきたこと。また自分の唐長さんでのモノづくりで意識していることがあります。

それは、季節や光、調度品などを含めたその場の空気感を唐紙に映すこと、です。

 

例えば、今の時期であれば、襖に入っている唐紙が、その季節の空気や射してくる光、周りの調度品を映して、4月らしい色目になる。5月だったら5月、秋であれば秋・・・。そういう色使いを常に意識すること。

きものに置き換えると、帯だったら帯の色目がその時の季節や着る人の雰囲気、着物の色に応じて、雰囲気を映してくれる。
もちろん、コーディネートは必要にしても、その帯を結んだときには、それらを越えて何かいい感じを与えてくれる。そんな帯作り、を意識しています。

 

最近、上がってきたのはこの『角花文様』の帯。
意匠的には、日本が文明開化期に入って、洋が流入、急に変化するその時代の空気感も受け入れて、消化できる、そんな雰囲気を持っている文様です。

 

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【角花/紹巴織】

 

いくつかの配色替えも意識して意匠図を製作していますので、もう数色は織りたいと思っています。ただ、どうしても一番目に作りたかったのが、この配色。地色は柔らかなベージュに胡粉をくすませた白、また柄部分の緯糸は絹と箔を使い、素材感の差、異素材のメリハリを利用して柄を浮き上がらせました。裏地はまだですので、袋帯として完成するのはもう少し先ですが、おそらく周りの空気感を拾いながら、着物や小物とコーディネートしていくと、上手く馴染んでくれる帯になったと思います。

 

この文様でも、沢山試作は取りましたが、まだまだ素材部分やってみたいことはあります。また、文様が変わるとそれに応じて、したいことも変わります。それに応じて、倍々と試験織も考えて、試し織りもやっていかなくてはいけませんが、一番シンプルな文様で、色んな話やモノを見て、色や文様の表現にプラスすることができる環境、なかなかありません。最大限、活かしたいと思います。

 

 

ギャルリー田澤さんでの唐長の世界展は、22日まで。もう少し会期があります。
もし、お時間と興味のある方は是非、訪れてみてください。

桜が終わった京都は少し空いてくるかもしれませんので・・・、ぜひ。

 

 

 

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2016年04月06日

生地作り。

 

途中の図案や仕上げ段階の意匠図(紋)を待つ間、次は『これやってみよう。』と、少しだけ新しい試みを色々としています。
試みが全てが思い通りに行くわけではないので、また思いついたこと全てを試すわけにも行きませんが、自分の中で上手く行きそう、やってみたい、そう思ったことに関しては試験を進めます。

今日紹介するのは、それなのに『今のところは』失敗に終わった風通の帯です(苦笑 ややこしい)。

 

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『右側が今回の試験。
左側(無地っぽく見える方)は地紋の見本

 

この試験織の経糸は、麹塵。そこに緯糸(横糸)として太めの紬糸を打っています。ここで入れた紬糸は通常の絹糸よりも倍近く太く、ただでさえ打込んでいる(目が細かい)この織物ではこれ以上織れません。この試験でも精一杯、織り手さんに織ってもらったものです。おそらく紬糸を細くすればなんとかなりそうですが、今進めたい帯の風合いがつくれませんので、このやり方では難しいため、今は方向転換を考えています。

 

もし、そのやり方が上手く行けば、ここにもう一色余分に使うことでき、さらに風合いも作ることができそうです。
もう何度か試験は必要ですが、ここで上手く行けば八寸名古屋帯(唐長文様)が進められそうです。以前から作りたかったモノづくりですので、継続して続けていきます。

 

 

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