人をうつした様なモノづくりになれば・・・。/南蛮七宝文様に葵柄
唐長のことで何をやるのもの実験だ。
社内、社外に関わらずしばしば言われるのが、
『売れるものを作らんとね。』とか『売れ筋とかわかってる?』『これはだれが締めるの?』。
それは社内はスタッフ、社外は主に問屋さんからのお言葉です。
商売としてやっている上で、もちろん必要なことですが、それとは例外のモノ作りをする必要もメーカーにはあります。
例えば、新人がやみくもに好きなモノだけを作る。
のは(やってほしい気持ちは置いておいても)、あまり良くないかもしれませんが、ある程度の経験を積んでいて、どのあたりが売れ筋になるのか?そのつぼも分かっている、もしくはそれを理解しそうになっているスタッフが、自分の好きなモノを作ることは、良い。と考えています。
それが今の『売れ筋』とは違っても、今後のモノづくりを見据えると悪くない、そんな意味です。
上の様に書くと当たり前の様に見えます。
が、意外にも『それもアカン』『売れ筋から離れるべきでない。』『冒険しすぎだ。』という口々に言う、売れ筋原理主義者が多いのが現実です。文字で書いてしまうと、面白みも何もない様なモノ作りに見えますが、『どこの会社の作る物も似ている。』そんな話を耳にすることが最近になって多くなったので、現実的には、売れ筋追求の沼にハマっているのかもしれません。
自分のモノ作りは、それとは違って・・・と書きたいところですが、自分では評価できず、こんなモノづくりをしています。
ほとんどのモノづくりの場合、合わせる着物にも意識をしますが、それは僅か・・・。それよりも今までお会いした人を思い浮かべて、モノ作りをするようにしています。この人だったら、こんな帯が似合いそう、とか、あの人の雰囲気をそのまま帯の形にしたら、こんな帯かな?そんな帯づくりです。ただ、後者の場合は、実際にその人に合わせて、合うのかどうかは、やってみないとわかりません(笑)。
結局、それが売れ筋の帯になるのか?不明ですが、
結構ずっと、自分の中にある『モノ作り』へのアプローチです。
そして、先日メルマガでも少々紹介していたのが、この帯。
『葵』の柄を南蛮七宝の上に置いたモノ。唐長の千田誠次さんが制作された作品を元に、試織したものです。
まだ、帯にするかわかない実験に近い試し織です(今度、誠次さんには実際にこの裂地を見てもらう予定をしています。)
この裂地の場合、元の図案になるモノはあります。もし、上記に書いた様に、ある程度『特定の人』を思うかべることがことができない場合は、おそらく帯にすることはない、または作るのは難しいかな、と思います。できたとしても、しばらく経ってから、自分で作ったことすら記憶に残らないような帯になってしまいそうです。
この試織の前、作品をはじめて見せて頂いた時、頭にイメージしたのは2人の方。その二人は雰囲気もおそらく性格も全然違いそうですが、この帯を合わせたら、一方は白大島、一方は御召の濃い色に似合いそう・・・。そんなイメージを持って作りました。実際、気に入って頂けるのか?分かりませんが、完成時には、まずその2人に見て頂きたい帯です。
自分の場合は、こんな帯づくりをこれからも繰り返していくと思います。
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