レコメンド/金彩織でつくる懐紙入れ
今日はちょっと昔話になります。
織物をつくるメーカーにとって、『大事なこと』が問屋さんや小売屋さんとはちょっと違っている場合があります。
特に悪い感情では、無いのですが、昔言われたことで今でも記憶に残っていることがあります(笑)。
そのときは、『打ち込み』についてでした。
この言葉、着物を着たりするときには、まずは出てこない、この言葉。
帯には、『どれだけ使いやすくて、合わせやすいか?』が重要なのは、もちろんわかります。
この言葉は、一般の方には興味を持って頂いた方だけでも充分ですが、
この業界の方から、『消費者には関係ないし、意味がない。』的なことを言われたことは、結構昔のことですが、まだ残っています(苦笑)。ちなみに、『関係ない』と言われてから、随分経ちましたが、私の場合、必要があれば、誰にでも未だに打ち込みの話はしています(苦笑)。
ちなみに、この『打ち込み』という言葉。
イメージとしてはガチャンガチャンと筬打ちをする密度、濃さを言います。
細かく言うと、一寸(約3.788㎝)の間に筬を何回打って織物を織るのか?です。
それが各織物、紹巴織や総紗縫、二重織などなどによって異なります。
もし、例えば総紗縫で、いつもより余分に筬を打ち込んでしまうと、風合い、結び心地は変わってしまいます。
柄も何%かは、縮まって(潰れた)、見た目までどこか変な柄になり、おそらく『総紗縫』ではなくなります。
大げさにいうと、打ち込みが変わると、すべてが変わってしまいます。
今ある全ての帯シリーズは、それぞれ一寸の間に決まった回数を打ち込んだ織物が前提で作られています。
たとえば、紹巴織。打ち込み85回で、この糸、この糸数、この85回用の意匠図が決まっています。
これが、ちょっとでも狂うと、なにか変に。そんな絶妙なバランスで保たれ織っているのが、現状の帯です。
そして、前述の『関係ない(しつこいですね〜笑)。』と言われたときの織物が、この『金彩織』。
(新人の頃です)モノづくりに深く足を踏み入れたとき、糸を持って、一日中この織物と格闘していました。
とくに配色では、糸数が大変。自分のその時の経験で予測する、3−4倍くらい・・・。
誇張じゃなく、それくらい沢山の糸を使って、一本の帯が織り上がります。
その分、上手く行ったときの質感・ボリュームは格段に素晴らしい織物ですので、
その感動も、自分が関わった帯を見ると思い出せます。
ちなみに、この『金彩織』は懐紙入れだとしても、重さも・・・。
通常の約40ḡに対して、68gと1.5倍ちょっとくらい。
『金彩織の懐紙入れ』
このとき、とっても苦戦しながらモノづくりをしていたので、
その強い印象に残った経験をお客さんへ伝える。⇒『打ち込み』関係ないでした(苦笑)。
いまでは、なにごとも関係ないことは無いので、その人は勿体無いことしているなぁ、と思えますが、
若い時は、なかなかそう思えません(笑)。
そんな金彩織で制作した懐紙入れが最近上がってきて、
手に持っていると、今だにいろいろと思い出します。
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